囲いをまとう箱 完成

先月、裾野の根上邸が完成しました。

コアになるRCの箱を木造の壁と屋根が囲う、興味深い形態です。

中心になるRCの箱には寝室と水回りが、その外側の木造の箱(囲い)には日常の生活が包含されます。

RCの箱の上部(2階)には食事とくつろぐためのスペースがあり、箱の周囲(1階)は多目的スペースがぐるりと取り囲みます。

最初にこのアイデアを見たのは2年前でした。

根上さんがご自分で製作された模型を持参し、この様な住宅を考えているのですが施工は可能でしょうか?とのご質問でした。


(この模型は最も初期の物です)


1辺が8mの木造の囲いの内部には柱など存在しません。そのため屋根面はすべて外周部の壁で支えなければなりません。

また、南面はすべてガラス張りで構造壁が存在せず、その他の3方の壁も上部と下部にサイドライトのFIXがぐるりと回ります。

このトリッキーな構成を見て、とてもワクワクしました。

この形を成り立たせるための方法はいくつもありますが、構造が出しゃばりすぎてコンセプトを壊しては本末転倒です。いかにスマートに木造とRCが調和するかが大切だと感じ、その場で構造を成り立たせるための幾つかの具体的な手法をお話ししました。

その出会いから、根上さんとの共同作業がスタートしました。そして、恩師である東大の稲山先生を巻き込んでのアイデア出しがしばらく続き、次第に現実的な形になってきました。その様な過程を経て、やっと完成した建物です。感動も大きいですね。



外部の開口部で開き窓以外のFIXウインドウはすべて木製枠です。

窓の木部は「アセチル化木材」を使用しました。これは木材中のセルロース水酸基をアセチル基に置き換えた素材で、セルロースが水分と反応出来なくなるため、非常に腐りにくく、水分による変形もごく僅かと言う優れものです。しかしこの木材を使用する場合、アセチル基が鉄を腐食させるため、接合具にはすべてステンレスビスを用いる必要があります。
これをあえて無塗装で使用する事により、次第に表面がグレーに変色する経年変化を楽しむという趣向です。ハイサイド、ローサイド窓には真空ガラスを用い、熱還流量を極力抑える事にしました。


床下には空調室を組み込みました。

写真ではステップの途中にスリット状の開口部が見えますが、現在研究中のYUCACOシステムのリターン口です。
これにより床下チャンバーを利用した空調システムが使えます。

様々な工夫を盛り込んだ住宅ですが、最も大切なことは、家族のいとなみを包む器として、当初のコンセプト通りの住まいになるのかどうかが気になっていました。
そこで根上さんのブログを拝見したところ、ご家族の活き活きとした姿が確認でき、安心しました。リンクの許可を貰いましたのでご紹介します。


http://negamieiji.blog.fc2.com/



下記は工事中の様子です。
http://d.hatena.ne.jp/aldy/20130528/1369740485

http://d.hatena.ne.jp/aldy/20130424/1366772774




ヤギモク 遠藤