「囲いをまとう箱・根上邸」が第2回家づくり大賞の生活提案賞、最多得票賞を受賞
「NPO法人・家づくりの会」が開催した今年の第2回家づくり大賞に、昨年ヤギモクが施工した裾野市の根上邸が入賞しました。
この賞は2013年から始まった新しい賞ですが、それぞれのジャンルを設定し、家づくりの様々な工夫にスポットを当てる企画です。
賞のジャンルは9種類です。(カッコ内は今回の応募作品数)
1.快適空間賞 (32)
2.生活提案賞 (22)
3.素材ディテール賞 (11)
4.作り方賞 (10)
5.リノベーション賞 (14)
6.ローコスト賞 ( 8)
7.エコロジー賞 ( 9)
8.まちなみ賞 (12)
9.ロングライフ賞 ( 9)
9部門全部で127点の作品が応募され、根上さんがチャレンジした「生活提案賞」では22点の応募がありました。
その中で一般投票部門で1位となり、更に全ジャンルの中でも最多得票賞を獲得したのです。
生活提案賞とは「ライフスタイルや生活変化、家族構成等の変化への対応で建築コンセプトとライフスタイルが合致する新たな住宅の提案」を競う賞です。
この住宅は、施主である根上さんがコンセプトとプランを作成し、東京大学の稲山正弘先生が構造計画で参加、根上さんと私でディテールを作り込みました。計画から完成まで1年半以上掛かりましたが、苦労の甲斐がありました。
この建物は二つの箱から成り、内側の箱には寝室を、その箱と外の箱(囲い)とのすき間を活動の空間にする構成です。外側の箱はガラス面が多用され、疑似外部空間にもなり、路地の途中で生活するような楽しさがあります。
実は構造計画もアクロバティックでしたが、空調計画も負けじと大きな問題でした。
内側の箱はRC打ち放し、外の囲いは木造です。RCは巨大な熱容量を持ちますが、暖房の仕方によってはまさに諸刃の剣です。間欠暖房ではコンクリート全体を暖める事ができず表面から出る冷輻射の影響で体感温度が下がり、空調の設定温度をかなり高くしなければ寒さを感じます。そうなると相対湿度が下がり加湿器が必要になります。また、吹抜+ガラス面でコールドドラフトが吹き荒れる環境になってしまいます。
当初想定していたライフスタイルを実現するための最大の工夫は、実は今回採用した床下チャンバー暖房システムだったのです。
YUCACOシステムの第一号として廊下の床下に小さな空調室を設け、その中に2.8kWのエアコンが一台、DCファンが6台入っています。そして全館空調で連続暖房としたのです。暖房温度は21℃に設定し、とにかく「寒くない室内環境」を目指しました。21℃の空気は暖かさをあまり感じません。しかし寒くはないのです。これにより、外気温度が0℃まで下がっても寝室は一日中ほぼ20℃前後となり、湿度も35%〜40%です。
2階のLDKは南面の巨大なガラスの冷・温・輻射により変動はありますが、温度が下がる午前5時頃は寝室で就寝中であるためそれほど問題にはなりません。外気温度の変動に比べ室内はとても快適になります。全館暖房であるため、どこに行っても寒くない環境は今回の様な大胆なコンセプト住宅にも大変有効だったのです。
床面吹き出し口
根上邸の紹介
http://d.hatena.ne.jp/aldy/20131005/1380966218
ヤギモク 遠藤