森林・林業再生プラン コンクリート社会から木の社会へ

先月7月15日に林野庁から森林・林業再生プランの中間とりまとめが発表されました。
昨年12月に検討委員会がスタートしたこのプランは5つの委員会を同時に動かしています。
農学部の井上雅文准教授が、その内のひとつ「国産材の加工・流通・利用検討委員会」の座長をしています。
そのため先日の「木質材料学特論」では、森林林業再生プランの報告がメインテーマでした。
その場で大量に渡された資料をパワーポイントで解説していただきました。
宿題のレポート提出もこの中間報告書を精査して意見を述べる内容でした。

このプランの目標は、2020年までに木材自給率を現在の24%から一気に50%まで上げよう、と言うものです。

そのためには様々な活動を同時多発で実行する必要が有ります。

木材利用の多くは建築が担っています。そのため木材の伐採から製材、運送、プレカット、建築などの流通利用分野は非常に重要です。
中間とりまとめのシュミレーションを見たところ、試算では2020年の住宅着工数を87万個もしくは98万戸の2パターンで見積もっています。しかし昨年の79万個からするとこの数字は希望的観測も含めた様な気がします。

しかし実際の所、木造の国産材化は段階的に進んでおり、合板類も輸入合板から内地材の針葉樹合板に切り替わりつつあります。平成17年には18.2%まで落ちた自給率が24%まで回復したことでも判ります。
更に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が国会を通り、公共団体が建設する中低層の公共建築物を原則として木造にする事になりました。

それを受けて静岡県でも先月末の議会で川勝知事が2階建て以下の公共建築物を原則木造化する旨の県の基本方針を発表しました。

環境保護や水源の涵養、CO2削減など様々な大義名分をバックグランドに持つこのプランは、順調に議論が進んでいるようです。

しかし、国内の林業や製材業は小規模で生産性が低く、海外との競争に太刀打ちできません。
まずは良質な木材が安定的に供給される仕組みの構築が望まれます。


以前カナダのBC州に木材の視察に行った折、伐採から製材の流れを見学しました。
そこでは輸出のためのコストダウンのギリギリの努力が有り、その規模の大きさに圧倒されました。

日本でこれらの分野を何とかすることはなかなか困難ですが重要な課題です。


以前行ったカナダのBC州の様子です。
BC州では製材会社が入札で伐採権を取得し、自分の工場で製材するために伐採、運搬をします。

伐採はこの機械が担当します。巨大フェラーバンチャです。
一本の木を切るのに数秒でOK。同時に数本の木を束ねて掴みながら切ってゆきます。

先端の部分はこんな感じです。
このフェラーバンチャはハサミ式ではなく巨大丸鋸式になっています。


伐採現場に仮設の土場が有り、直接トレーラーで製材工場まで運びます。

工場では大量の丸太を自動で仕分けします。

凄いスピードで材木になっていきます。

できた製品は工場から直接貨物列車で出荷します。

このように海外の輸出産業としての木材流通は半端では有りません。
今回の再生プランでは日本も木材を輸出しようとの考えです。
しっかりとした競争力を持つと共に素材への付加価値をどうやって加えるのかも大切だと感じます。

ヤギモク 遠藤