日本建築学会2011

今年の建築学会は東京での開催となりました。場所は早稲田大学、日程は8月23日〜25日でした。
早稲田大学に行くのは何と37年ぶりです。この間にいくつもの校舎が新しくなり、キャンパスも以前にも増して美しかったです。私が通う東大農学部と比べるとかなり近代的なイメージでした。まあ、東大はゴシック様式の校舎が多いので全体のイメージが古いのは仕方が無いのですが、早大を見て、もう少し建物にも予算を掛けた方が良いと感じます。


会場内は今年も多くのボランティアにより整然と運営がなされています。
資料の販売コーナでは今回の大会の様々な資料が購入可能です。


今回の大会のプログラム

木質素材や構造関連の発表は11号館7階の3つの教室で行われました。
省エネの徹底もありそれぞれの部屋はかなり暑く、うちわや扇子が大活躍状態でした。
発表時間は一人5分間で、3分間の質疑を合わせても8分間です。発表内容を本当に精査して余分な事には触れずにポイントのみを段取りよく話さなければなりません。多くの発表者は時間オーバーで質疑時間が減ってしまいます。木材学会の15分に比べるとあまりにも短時間なので、正直言って複雑なストーリーはまず無理ですね。
発表にはパワーポイントを使うのですが、なかなか映像が出ない人もいて発表以外にも苦労があります。

質疑応答では質問がほとんどでない場合も多く見られ、その場合には司会者が質問をして時間を調整します。司会者はある意味発表者より大変だと感じます。

今年はパネルディスカッションも聴講しました。タイトルは「木造禁止を再考する」です。
実は1959年の日本建築学会で「木造禁止を含む決議」が突然行われ採択されたのです。その後木造に関する教育や国の施策が後退した、と多くの木質構造に関わる者が感じてきました。昨年漫画雑誌のビックコミックの「美味しんぼ」にこの話題が載り、建築学会ではホームページでこの「決議」を否定するなど、関係者の間ではけっこう大きな話題となっていました。
このPDのパネラーは五十田博、有馬孝禮、坂本功、菅原進一、内田祥哉、各先生という豪華な顔ぶれで、今春建築研究所から工学院大学に移られた河合直人先生が趣旨説明とまとめを担当しました。この先生方が揃って登壇するのはもしかしたら今回が最後かもしれないと思い聞きに行きました。
印象に残ったのは、内田先生の講演でした。先生は若いときに毎日木造の図面ばかり描いていたが、実はRCも建てたかったし、空襲を経験した多くの都市では都市の不燃化は当時としては理解できる範囲だ。ある程度の制限は掛けるべきだが「禁止」という言葉は思考停止を伴うので良くない事だと言われました。これは木造関係者が被害者意識を感じて話す内容ではなく、他の構造などと強調して未来志向で臨む必要があると。

私にとっては今回の学会で、活発に活動している多くの木質構造研究者達と親密な情報交換ができたことが大きな成果でした。


前回の大会の様子です。
http://d.hatena.ne.jp/aldy/20100915/1284519152


ヤギモク 遠藤