UD工芸研究会バス見学会・その3

2日目の見学は飛騨産業さんとトヨタ自動車さんです。

まずは飛騨産業さんのショールームを見学しました。

エントランスには年代物の椅子が置いてありました。

この椅子は建築関係者なら誰でも知ってるトーネットの代表作「214:コンサムスツール」です。
これはこの飛騨産業さんで最初に輸出された製品です。
トーネットはこの製品を19世紀に5000万脚製造し富を築きました。

飛騨地域は1300年以上前から京都へ多くの職人を送り出した木工の里でした。
「飛騨の匠」として平城京平安京の造営や多くの寺社仏閣を造り、法隆寺の夢殿も彼らが関わっています。
そのため木工を地域最大の産業としてとらえ多くの努力で発展をしてきました。
この木工の里では、日本でもいち早くトーネットの技術を導入して家具産業を立ち上げたのです。
周辺には良質のブナ材が有ったことも理由の一つかもしれません。

静岡県も木工の産地ですが、その由来は浅間神社の造営のため集められた職人が住み着き産地として成長してきました。しかし飛騨の方がずっと先輩だったのです。やはりそれぞれの産地には様々な由来があるものですね。

この飛騨産業さんはまさに飛騨の家具産業を切り開いてきたパイオニアだったのです。
そして柳宗理を初めとする著名なデザイナー達のデザインはとても斬新な製品を生み続けました。
最近ではフェラーリのデザイナーとして有名な奥山清行氏も参加していました。

ショールームでは杉のコーナーが有り家具が展示されていました。
日本の林業継続のためには杉の需要を創り出す必要が有ると、杉を利用するための技術開発を進めて来た様です。

杉を利用するための技術として「木材圧縮」の技術を研究したとの事でした。私も井上雅文先生の「木材加工学」で木材圧縮技術を習いましたが、それらを上手く進化させた内容だと感じました。
杉の圧縮材は主にフローリングなどに利用され販売されています。杉は最大で元の体積の30%程度まで圧縮可能だと説明されました。杉の比重、たとえば0.38を30%まで圧縮すると比重1.26くらいになります。これは木材の真比重1.5に近い数値で、まあそんなもんか、と言った感じですね。

工場の見学では圧縮のための多段プレスを遠くから見学しました。
ローラーでの圧縮では水分で元に戻る為プレス機を使っているとの説明です。
驚いたことに節も同様に圧縮しており、そのまま利用されていました。

この技術を応用すると様々な製品が製造可能です。
そのアイデアをすこし見せていただきました。
これは圧縮材をスライスして接着した板ですが、グニャグニャに曲がります。

それをプレスします。いわゆる「絞り」ですね。

そうすると皿やお椀の様な形状になります。
それを仕上げるとこの様になります。

他にも色々有りましたが、ここでは杉の利用を促進するために多くの工夫をしていました。
これらの圧縮杉は注文がかなり増えてきたと聞きました。

工場ではやはりトヨタ生産方式セル生産方式を採用していました。
多くの知恵を結集して良い製品を生み出そうとする姿勢が伝わってきて、大変勉強になりました。

ヤギモク 遠藤