国宝 高岡山 瑞龍寺

先週、日本建築学会の為富山に行きました。富山市内に宿が取れなかったため電車で20分ほど離れた高岡市に泊まることになりました。せっかく高岡に来たので、学会に行く前に国宝の瑞龍時を同級生の日高さんと見学しました。

この寺院は加賀藩二代目藩主前田利長公の菩提を弔うために三代藩主利常公が建立しました。
曹洞宗の寺で禅宗建築の傑作です。棟梁は名工山上善右衛門です。


参道は美しく整備されており、利長公の銅像もあります。


伽藍配置は総門、山門、仏殿、法堂を一直線に配列し、左右に禅堂と大庫裏を置き、四周を回廊で結んだ壮大な建築です。

説明の看板です。伽藍と人体との比較がおもしろいですね。
法堂には伽藍の模型もありました。



総門は重要文化財で総欅造りこけら葺です。そのどっしりとした風情は期待通りの美しさでした。


門の桁には前田家の家紋が刻まれ組み物も美しいです。
左側の吊り元柱がアテ木で少し反っているのが気になりました。この柱を使うかどうか、おそらく棟梁も悩んだことでしょう。


梁上には家紋入りの板蟇股(いたかえるまた)が並びます。

柱の足元も当然根継ぎがされていました。

重厚な扉も美しい欅の中杢目が並びます。

桁の端部は通常金物細工を施しますが、欅の共材で造るというこだわりようです。


次の山門(国宝)は華麗で美しい二層建築です。

一層目が平行垂木、二層目が扇垂木(おおぎだるき)です。
扇垂木とは、小屋の中心から扇のように垂木が広がり、隅木部分の美しさを強調します。

中国や韓国では扇垂木が主流ですが、日本では平行垂木の和様(わよう)が主流です。
扇垂木を見たらほぼ禅宗様と考えて良いですね。

柱頭上には組み物が施され深い軒を支えます。和様では柱間には中備(なかぞなえ)と呼ばれる束や蟇股(かえるまた)がありますが、禅宗様は詰組(つめぐみ)と言って、柱上だけでなく柱間にも組み物を取り付け、美しさを強調します。
この美しい三手先組の尾垂木も禅宗様の特徴です。

扉も欅の玉杢(たまもく)を使っています。上部の菱形の組子は密教建築をイメージさせますね。


門の脇の回廊部分は詰組ではなく中備に蟇股を使っています。よく見るとこの本蟇股は母材から彫り出されています。斗と雲肘木は共材の欅で造られています。ここにもこだわりが見えますね。


さて次の仏殿(国宝)は二層に見えますが、一層三間で裳腰(もこし)付きになります。
屋根は鉛板を瓦風に見せたもので、極めて珍しい造りです。

母屋の屋根は扇垂木に三手先組で詰組になっていますが、下部の裳腰部分は庇なので質素な平三斗と出三斗の造りです。典型的な禅宗様建築ですね。

内部にはいると正面に美しい須弥壇(しゅみだん)が有ります。これも禅宗様のお手本ですね。
須弥壇のとりついている来迎柱も欅ですが、その高さに驚きました。よくこの様な材が手に入ったものです。

来迎柱上部の様子。内部も精緻な組物に飾られており、海老虹梁が母屋、庇共に多用されています。

庇部にも裳腰の地垂木が現しになっており、平行垂木です。

上部はもちろん扇垂木が見えます。


最後の法堂(国宝)は総檜造りでした。大唐破風が美しいですね。屋根は銅板葺きです。

唐破風には唐獅子の蟇股が有り、江戸期の華麗な彫り物文化が見て取れます。

前田利長公の位牌が安置されている内陣は金箔仕上げで彫刻欄間が見事です。


柱の一部にはパッチワークの様な補修の後が有り、長期間大切にされてきた様子がうかがえます。

このほかにも見所満載の寺院でした。

ヤギモクでも寺院建築の依頼が時々有り、これらの美しい匠の技はとても参考になります。
短時間の見学でしたが、大変感動しました。
誘っていただいた日高さんには感謝です。


ヤギモク 遠藤