公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律

今月10月1日より「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されました。この法律は5月19日に成立し、同26日に公布されました。6ヶ月以内の施行ですが、なるべく早く施行されるように努力するとしていた物で、その通り10月1日の施行になりました。

国では8月13日から、政令、省令及び基本方針案を公表しており、パブリックコメントを収集をしていました。


先月の木材新聞の記事です。

パブリックコメントによると、まずは法案の施行に賛成がほとんどで、むしろ付け加えて欲しい内容が多く寄せられたようです。
たとえば、

 公共性の高い商業施設や国の補助事業で整備する建築物も木造にして欲しい。
 無垢木材の使用を推進して欲しい。
 木造建築物の諸基準の整備をして欲しい。
 小規模林業の重要性について配慮が必要。
 地域材が消費される仕組みにして欲しい。
 地元業者を積極的に活用して欲しい。
 住宅に関しても木材利用促進策を講じて欲しい。
 海外で生産された木材の使用が制限されないような表現を追加して欲しい。

などでした。(木材新聞より)

この法律と合わせて、森林・林業再生プランも昨年12月に成立し、現在進行中です。
これらの法律は、鳩山政権下で、党の政策調査会を廃して、法律を大臣、副大臣政務官の3人で主導する事がおこなわれたため、まさに通常では成立するはずのない「奇蹟の法律」として登場しました。政策調査会で法案を審議すると族議員たちの抵抗があり、木材のみに焦点を当てた今回のような法案はまず通りません。現在の管政権では政調会を復活させたため、今後はこの様なスタンドプレー的な法案は無理です。

7月におこなわれた木質材料学特論で、井上雅文先生からこの法律の試料を配布され、趣旨の説明を受けました。

この中で国の責務として、国の低層公共建築物を木造とする事や、建築基準法の改正などの法整備を進めると有ります。
現在は3000㎡を越える建物は耐火建築物にする必要が有りますが、実はこの3000㎡という基準値も曖昧で、根拠が無いと以前から問題になっていました。その他の法律でも色々と改正が必要です。


地方公共団体の責務としては、国の施策に準じて各県で施策を策定し実施しなければなりません。これを受けて、静岡県でも8月の議会に於いて川勝知事が、2階建て以下の公共建築物を木造にするとの基本方針を発表しました。

しかし、これらに使用する為の木材の供給には、実は様々な問題が有ります。たとえば、JASの認定工場が存在しない県も有り、地域材の供給には体制の整備が必要なこと、また、大型木造建築物の構造計算ができる専門家が非常に少ないこと、更に大断面の木材加工ができる設備が不足しており、全国的に大型木造建築が動き出すと加工ができない。など色々です。

しかし、現在の木材業界にとってはまさに神風のような追い風であることは間違い有りません。井上先生もおっしゃっていましたが、この暴風の様な追い風で、船のマストが折れないようにしなければいけないと思いますね。

今日の木材新聞には札幌で3000㎡規模の最大級の木造スーパーができたとの記事が有りました。
これらの動きが今後加速していく事が予想されます。施工業者としても、技術の研さんに勤めていく必要が有りますね。

ヤギモク 遠藤