静岡県産材住宅の助成金

1月19日の読売新聞静岡版に平成23年度の県産木材の助成金に関する記事が載っていました。


この助成事業は「しずおか優良木材の家総合支援事業」として22年度まで実施されてきたものです。
実は昨年、今流行りの「事業仕訳」の対象としてあげられ、廃止に決定したものでした。
この廃止のニュースを聞いた時、私は本当にがっかりしました。現在環境問題の深刻化の中で、山には林野庁から多くの補助金が出ており、間伐などの助成がされてきました。しかし、いくら山につぎ込んでも、それらの地域材を使用する側のニーズが盛り上がらないと、材料の用途が広がらず、結果として大元の山の活性化にはつながらないからです。
なぜ使用する側のニーズが広がらないかといえば、地域の製材工場の製品レベルの低さが長年の問題でした。しかしここ数年、地域の製材工場の技術レベルは確実に向上しており、含水率の管理やグレーディングマシンによるヤング率の全量チェックが可能になってきたのです。
この背景には、「優良木材」として認識され、県が後押しして需要を造ってきたからにほかなりません。

このような成果を上げてきた事業が廃止と決定したことで木材関係者全員が落胆したのは当然のことです。
しかし今回、県は事業の名前を変えて「しずおか木の家推進事業」として2月の県議会定例会に提出することになったのです。今回の提出内容は前回までの年間9340万円の予算規模を、一気に2億円まで上げ、対象数を300棟から1100棟に引き上げる内容です。抽選だったのを無抽選にすることも掲げられました。

しかし、記事を読むと、これまで一律30万円の補助額が、県産材の使用規模に合わせてランク分けし、3段階に分けられるとのことが書かれていました。
静岡県産材を20立方メートル以上使うと30万円、15〜20未満で21万円、10〜15未満で13万円です。
早速県の林業振興課に電話で聞いたところ、まだ議会提出前だから詳しくは言えないが、おおむね記事の通りです、とのことでした。

県では木材使用量を1㎡当たり0.2立方メートルと仮定して100㎡の住宅であれば20立方メートル使用すると基準を設定しています。そのうち45%以上が県産材であれば助成金を申請する権利があるのです。

この45%という数字はそれなりにハードルが高く、柱、土台はもとより、梁桁の一部や、垂木などの羽柄材まで加えてやっとこの数字をクリヤーするのです。
なぜ100%にならないのかといえば、大きな梁は曲げ応力が大きく掛るため、県産材では入手に無理があり、どうしても杉と米松のハイブリッド集成材に頼る必要があるからです。その場合使用されるスギ材は九州産が多いのです。なるべく国産材を使うため、このような措置をとっていますが、静岡県内に集成材の工場が無いため県産材の集成梁が流通できないのです。

裏話ですが、この助成事業用の申請書を造るのにはそれなりに手間がかかります。
まず床面積から算出した基準使用量の45%以上をターゲットと定め、それを上回る材料リストを造る必要があるのです。これは構造図(伏図)から材料を拾い出し、そのリストから県産材使用リストを作成します。
それに様々な申請書式と伝票を添付して申請するのです。

材料のリストです
これを県産材使用リストに組み直します。

そしてその他の添付書類をつけて申請するのです。

ヤギモクではこれらの資料作成費をサービスで行っており、助成金は全額お客様にフィードバックしています。

このような申請書を作成しても、これまでは抽選であったため、助成金がもらえる確率は約半分でした。
それが無抽選になるのは良いことですが、還元できる金額が少ないとお客様のメリットもそれなりになってしまい、私たち裏方の努力も満足度が半減することにつながりかねません。おそらくほとんどの住宅が13万円の助成額になると思います。
せっかく作ったこれらの書類が、お客様の満足に直結するように、助成額ランク分けの見直しをしてほしいものですね。


ヤギモク 遠藤