林業機械化センターその4 展示棟
まず驚いたのは建物頂部を貫く長い切り妻屋根でした。
エントランス部分に大きく付きだしたこの屋根は、屋根面の水平構面のみで水平力(風力、地震力)に対して抵抗しています。
これは中央の回廊部分を挟むように配置された展示室部分が充分な耐力壁を持っているため、高さ9メートルの回廊屋根はその屋根構面の応力伝達で展示棟に寄り添っているのです。
そして基本構造は他の建物と異なり、ラーメンを使わず通常の軸組構造としています。
回廊の小屋組は左右の登り梁をずらして配置し、支点桁を挟み込んで相持ちに組むことで頂部のモーメントを金物を用いずに負担しています。
耐力壁は面材系で上部の梁を長尺の大断面集成材にする事により、耐力壁端部の引き抜き力を梁の抑え効果で低減しています。
しかし大胆な空間です。
この階段は本当に人が乗っても大丈夫なの?との声に、まず先生が登りはじめ、みんな大丈夫だから上がってきなさい、と声を掛けました。中には剛性を確かめたくて階段中央部でジャンプしている者もいました。
別に信用しないわけでは無いのですが、私は後から乗ってみました。確かに吊り橋のようなふかふかした感触ではありませんでした。しかしこの吊り橋階段の先には何があるのか? 実は外を見るためのお立ち台のような狭いバルコニーがあるだけなのです。つまりここからの景色を堪能するための装置なのです。贅沢です。
これがそのバルコニーです。
そして階段上部から見下ろした室内です。
1階と2階を結ぶ階段の構造も驚きです。
木造の壁から跳ね出した、片持ちのキャンティレバーです。それも小さなほおづえで支えています。
これらの4棟は毎年1棟づつ建設されたので、きっと設計中は楽しくてワクワクしながら仕事をしていたのでしょうと先生に聞くと、楽しかったですね、との事。まあ、当然でしょう。
公共建築物に関する木材利用に関する法律が施行された今、低層公共建築物は原則木造にすべしとの決定がなされました。この様な様々な木構造のお手本は、多くの設計者に勇気を与えるものだと強く感じました。
ヤギモク 遠藤