長期優良住宅先導事業の現場見学会

先週末12、13日の2日間、島田市に於いて国土交通省からヤギモクが採択を受けた「長期優良住宅先導的モデル」の現場見学会がありました。

これは国土交通省が平成20年から実施してきた先導事業に於いてヤギモクが採択を受けた為、国の補助を受けて建設した住宅です。


当社は平成20年第2回と平成22年第1回の事業提案でそれぞれ採択を受けました。
毎年2回の募集がありましたが、新築部門は昨年で終了しましたので、これまで全6回のコンペティションが行われたわけです。
その中でヤギモクは2回応募して2回とも採択を受けました。

ベースとなった建物躯体は当社オリジナルの「エピオス」です。この躯体を使用してH20年の採択を頂きましたが、H22年バージョンは更に地産地消を掲げ、地元の素材をふんだんに使用する中で、構造強度を極限まで高める工夫を施しました。

地元の木材を使う事は最近のトレンドですが、多くの工務店の取り組みを見ていると、地元の木材を使うことが目的になっているかの様で、生活者への価値の提供が、地産地消への協力や満足感といったイメージ的な内容に終始している様に感じます。しかし、地域の素材を活用する事だけでは顧客への直接的なベネフィットにはならないと考え、当社はこの様な地域材を使っても、実験値を元に極めて高い耐震強度を実現する事で、長期間使える安全な建物を供給する事を掲げ、国土交通省の評価を頂いたのです。

昨年行った実験の様子です。
http://d.hatena.ne.jp/aldy/20100805

一般的な長期優良住宅は耐震等級2以上とされ、壁量検定とバランスチェック、接合部チェックの簡易な方法で確認審査機関へ申請されます。
対象としている地震力は下記です。
耐震等級2 = 建築基準法で定められた値の1.25倍
耐震等級3 = 建築基準法で定められた値の1.5倍

しかし今回の当社の先導モデル「県産材エピオス」は、1.75倍の地震力を使い、躯体の安全を許容応力度計算を用いて細部まで計算し、証明するのです。具体的には層せん断力係数C0=0.35で計算します。


そして今回行われた見学会ですが、島田市のY様邸です。

最近徐々に増えつつある平屋の住宅です。
外壁は長期間脱落する事の無い引っ掛け式のタイル貼りで、屋根は陶器瓦です。

基礎はZAM鋼板を用いた型枠をそのまま残して基礎の外皮にします。
これはコンクリートの中性化を極端に送らせる事と強度アップがねらいです。

超長期住宅とは福田内閣の時にでた200年住宅構想が発端です。そのため基礎の耐用年数はこれまでの性能表示の劣化対策等級3で求められた3世代75年〜90年より更に長くもたせる必要があります。

基礎の側面には金属のキャップが数カ所取り付けられています。

これは将来、洪水で床下浸水の被害を受けた場合の水抜き穴に使います。また基礎内に排水管など長尺部材を入れてメンテナンスに使用する際には、資材の挿入口にもなります。
床下はメンテナンスをしやすくするため、50㎝の高さが確保されています。


玄関を入ると勾配天井の象徴的な空間が来客を迎えます。
正面には設計者とインテリアコーディネーターのコラボで製作したオブジェがあります。

ガラスの棚のサイドには照明器具が埋め込まれていて非常に緻密な構造ですね。

このオブジェは天井まで伸びていて、吹抜空間の縦の長さを強調しています。


リビングに入る引き戸はオリジナルのゼブラウッドです。

白色の染色を施したこの表情は商品企画課の宮城島君が苦労して基準色化した物です。

室内には中央に和室が有り、来客時には寝室に、普段はリビングの茶の間になります。

壁の厚さを利用した床の間です。掛け軸を飾る場所としては最適です。織部床のコンセプトですね。

押し入れ内部はこだわりの桐無垢材を使用しています。

これはヤギモクオリジナルの材料で、厚さは壁が12㎜、棚材が25㎜です。
和室の押し入れの標準仕様です。

リビング内のニッチもガラス素材を使っています。

ダイニングです。無垢のテーブルが置かれていました。

床材は生地仕上げのナラ材フローリングです。

トイレの前の手洗いは造り付けになっていて、オーナー様のこだわりが感じられますね。

洗面脱衣所には今回の先導モデルで提案した暖房器が設置されています。

これは衣服を脱ぐ際のヒートショックを極力避けるため、他の室温より洗面、浴室の室温を上げるためです。
もちろんその他に洗濯物の乾燥にも役立ちます。そのため天井には電動昇降型の物干しが組み込まれていました。


小屋裏の有効利用のため、天井裏には小屋裏収納が設置されています。
屋根断熱のエピオスなので小屋裏空間も室内と同じ熱環境になるため、夏でも快適に使えます。

このほかにもオーナー様のだわりが随所に見られる素晴らしい住宅に仕上がっていました。

設計は海野主任、インテリアコーディネーターは鈴木里香さんでした。
おそらく今月行われる設計、ICのコラボ発表会にはこの建物が登場する事になるのでしょう。
楽しみですね。

ヤギモク 遠藤