せん断試験

先日オートグラフを使ったせん断試験をやりました。
木造住宅の外周部に貼る合板をイメージした物です。
柱を母材として、それに面材の合板を釘で打ち付け、一面せん断のデータを取る試験です。

今回は取り付け治具を工夫して、終局は引張りになる試験です。
圧縮で大きな力を掛けると面外に力が逃げて信頼性が下がります。

治具はこれです。

鍛冶屋さんに行って一緒に作りました。
細部を見ると苦労の後がけっこう見えます。(笑)

試験体を取り付けるとこんな感じです。

この写真は見て判るように単なる釘の一面せん断です。

終局はこんな感じです。

ただ単に釘がずれて終わりです。

これに色々な工夫を施し、せん断性能がどの様に変化するのかを見るのが目的です。
実は昨年も小さな試験体で圧縮の単調加力でいくつも試験しました。
しかし今回は試験体を昨年より大きく作り、変位計の変位を取り込んでプログラマブルで繰り返し加力のデータも取ります。

まずは単調加力のグラフです。

下側の茶色の曲線が釘のみのせん断です。
それにある工夫を加えて取ったのが赤で示したグラフです。
これで見ると赤のグラフは弾性域が大きく広がり、降伏点Pyも明快で、釘だけの物に比べPyの値も極端に大きくなります。

これを繰り返し加力の試験データを取ると、綺麗な形になります。

繰り返し点は、0.5㎜、1㎜、1.5㎜、2㎜、4㎜、8㎜です。繰り返しは各ステップ3回づつです。
さすがにこれだけ繰り返すと、1試験体に2時間掛かります。

単調加力で直線だった部分を見ると弾性が確認できます。

初期の応力は母材と合板との摩擦が働いて、変位がほぼゼロでも3KN程度の初期応力が出ています。
今後は、合板と柱の間にテフロンシートなどを挟み、これらの初期応力をなるべく小さくする工夫も必要ですね。

これらの技術を応用すれば、巨大地震でも塑性域に入らず、弾性域だけでC0=1.0(建物加速度1000gal)の地震力を簡単にはね返す木造住宅が造れます。つまり弾性設計が無理なくおこなえる訳です。

これらの小型の要素試験でもこの様なしっかりしたデータが取れるので、実大耐力壁試験をやる前の予備試験としては充分使えます。この程度の試験体なら、自分で作れますのでとてもリーズナブルです。

これは私の試験体製造現場です。

昨年買ったプロクソンの超小型傾斜盤が大活躍ですね。(笑)

おもしろいです。

ヤギモク 遠藤