静岡県ユニバーサルデザイン・工芸研究会の講習会

先週14日、今年度第3回目の研究会が開催されました。
この勉強会は静岡県工業技術研究所のユニバーサルデザイン科と工芸科に関係の深い企業約50社が集まり合同で開催している会です。



今回の講習は「木のネイチャーテクノロジー」と題して横浜国立大学名誉教授の矢田茂樹先生に御登壇いただき、松ぼっくりが外気の湿度を感知して笠を開く機構から、異種の木材を貼り合わせて湿度変化に反応する「バイメタル」ならぬ「バイウッド」の紹介をしていただきました。

冒頭におみやげとして木を使ったおもしろグッズを全員がいただきました。
これです。

矢がハートを射止めている形ですが、どうやってハートの穴より大きな矢を差し込んだのかが先生からのクエスチョンでした。
私は、大きさは違いますがこれと同じ物を東大の井上先生の授業中に見ていたためすぐに分かりました。
解答は、矢尻の部分を熱湯で煮て圧縮したまま乾燥させ穴を通した後に水で膨らますのです。
圧縮木材や曲げ木などの技術は木材加工には無くてはならぬものです。
9月に行った見学会でも岐阜の家具メーカーさんがこれらの技術を多用していました。

その時のブログです。
http://d.hatena.ne.jp/aldy/20110913


まずは木材のセルロースの束であるミクロフィビリルの構造と、含水率が変化する際の水分による繊維の束の幅方向の膨潤についての説明です。
セルロースの繊維は水分と結合しても長さ方向にはあまり変化は有りません。
横方向には水酸基が出ていてそこに水分子がくっついて膨らむため、繊維の束は横方向に膨らむのです。

この原理を応用して、繊維方向を変えて貼り合わせた木片を水につけたり乾かしたりすると膨張率の違いで曲がるのです。これは違う種類の金属を貼り合わせたバイメタルと同じ構成です。バイメタルは温度変化で曲がりますがこれは湿度変化で曲がります。


幅方向に貼り合わせた木材と繊維方向に切り出した木材を同じ長さに切り水につけるとこの様に幅方向に貼り合わせた木材が長く伸びます。
それを応用してこの様な物ができあがります。

会場では水につけると花弁が開く木でできた花や湾曲させた様々なアイテムが紹介されました。

この研究会の目的は会員企業の商品開発のヒントになるような技術の紹介を目的にしていますので、これらを応用した製品ができると良いですね。

次はワークショップで、簡単に描ける手描きパースでした。
ユニバーサルデザイン科の多々良科長が簡単な図学の内容からちょっとした応用までを解説していただきました。

私も久し振りにパースを描きました。

この後、交流会が開催されて矢田先生から木材の利用や業界の事などいろいろとお話しを聞くことができました。
会員から先生にたくさんの質問がよせられ、活発な交流会になりました。


ヤギモク 遠藤