国土政策フォーラムin焼津 津波防災まちづくり

昨夜、焼津市大井川文化会館で国土交通省焼津市の共同開催によるフォーラムが開催されました。
6時開始でしたが渋滞で10分ほど遅れて到着したらすでに駐車場は満車でした。
係員に頼み何とか車を置かせてもらい会場に入ると配付資料はすべて配布済みで貰えず、席も最後列の通路での立ち見でした。
この地域の津波に対する関心の高さを見せつけられた想いでした。

まず関西大学社会安全学部長の河田恵昭氏の「東日本大震災の復興と津波防災地域づくり制度」と題した基調講演が有りました。

河田先生のこれまでの経験から、「普段やっていないことは緊急時も対応ができない」。震災を受けるとインフラ整備や様々な政策実行が必要になるが、人がいないため予算が付いても仕事ができない。この10年で公共施設の予算が半減し、道路整備などを請け負う業者が居ない。災害が起きると、復興には個人7、共同活動2、行政1の割合で負荷が掛かる。経済成長が保たれた環境では数年で復興するが、地域経済が困窮すると復興には相当な年月が掛かる。など、多くの話を頂きました。

2部のパネルディスカッションのタイトルは「津波の被害を減らすためには」でした。

焼津市が用意したビデオを見た後、それぞれの立場から地域防災のあり方について意見が出ました。
焼津市は海抜10m以下の地域に市の人口の80%が暮らしています。全国では海抜25m以下に人口の半分が生活しているので、それに比べればずいぶんと危険な地域だと考えられます。駿河湾で起こる津波は5分以内に襲来します。それに対する焼津市の対策を市長が説明しました。今後5年程度で30基の避難タワーを建設する事、非難ビルの確保、沿岸地域での建築基準法の緩和による10m以上の建築物を建てやすくするなどです。

今回のフォーラムでは、「津波被害は避けられない」との観点から、防災意識の維持や避難訓練、被災後の復興などの話題が多かったのですが、この会場に集まった多くの市民の聞きたい内容は、自分の住んでいる町は具体的にどの程度の被害が起きそうなのか、自分の済んでいるエリアは大丈夫なのかを気にして、心配だから話を聞きに来た人が相当数居たと思います。この点では残念ながらその様な情報は有りませんでした。

私もこのフォーラムをネットで見つけ、今後の津波被害のマップやガイドラインの製作予定などを聞きたいと思い会場に出かけました。
県の危機管理部の広報官も出席していたので、その様な話が聞きたかったですね。


昨年11月17日に国交省から津波の波力計算に関するガイドラインの補足試料が発表されました。
これまでの平成17年のガイドラインでは、津波の波力を「浸水深の3倍の静水圧」で計算するとしていました。しかしこれは海岸脇に建つ避難ビルの設計指針で、実際には海岸からある程度離れた場所の建物には計算波力が大きすぎて、個人住宅などの強度の判断材料としては使えませんでした。アメリカのガイドラインでは津波が遡上する想定高さと建物の海抜からその建物に掛かる津波の流速を推定し、流速の2乗の圧力が掛かるとしています。
しかし、11月の補足資料では、海岸から500m以上離れた場所の建物には「1.5倍の静水圧」で計算すると書かれています。これはアメリカのガイドラインに近い内容になっていると感じます。
更に、海岸から500m以上離れた場所での木造住宅の記述もあります。性能表示の耐震等級3の建物は、2m以下の高さの津波の場合、その建物の2階に避難してもよい、となっています。
それなら、その住宅が存在する場所の想定津波高さが重要な情報となります。

静岡県のホームページのハザードマップを見ると、津波の想定高さと浸水域が閲覧できます。しかしその浸水域はあくまで駿河湾で起こる東海地震の単独でのシュミレーションであり、参考資料として150年前の安政地震(東海・東南海同時)の古文書による浸水域が示されているだけです。地震の本などを参考にすれば、これまで東海地震が単独で起きた例は見つかっておらず、常に連動しているとの事です。

やはり、3連動(東海・東南海・南海)の地震のエネルギー規模でのシュミレーションが必要になります。
昨年末に県の危機管理部に電話した所、24年度の予算で3連動のシュミレーションをやりたいとの話でした。
私としては、すぐにでもこれらのシュミレーションを実行してもらいたいと御願いしました。

静岡県は海岸線が長く、海の近くに多くの住民が暮らしています。それらの住民がすべて高層マンションに移動するわけにもいかず、現在済んでいる場所でどの様に対処するのかが重要です。地震発生から5分以内に津波が来るとの事ですが、深夜などに地震が発生したら、避難し始めるのに5分は掛かってしまいます。夜の暗闇の中、瓦礫を除けながら近くの避難所に避難できるか疑問です。やはりそれぞれの住宅がどの様な津波被害を受けるのかを理解して、浅い浸水深で有れば住宅を補強して難を逃れる事も視野に入れなければなりません。
そのためには、県が早くハザードマップを更新する事が必要です。


ヤギモク 遠藤