全館空調住宅見学

先週のゼミの日に午後の坂本雄三先生の授業に参加しました。この授業はすでに単位も頂き、出席義務は無かったのですが、何かおもしろい情報は無いかと、後ろの方の席でこっそり受講しました。(こっそりと言っても、狭い部屋でたった10人程度の受講者ですのでバレバレですが)

その授業中に話題がたまたま全館空調の話になり、先生から実は来週三鷹で実例を見に行くとの話が出たため、早速有志3名が参加を御願いし、一昨日見学してきました。

他の見学者とともに三鷹駅で待ち合わせ、全員で現地へ行きました。
この住宅は坂本先生の研究室に受託研究員として来られているIさんの御自宅との事でした。

閑静な住宅街の中に有るこの2階建ての木造住宅は、Iさんの人柄がにじみ出るステキな住宅に仕上がっていました。

総二階40坪のこの住宅は外壁がフェノール系断熱材の外貼り60㎜、屋根も同じ断熱材の120㎜、基礎、基礎下はホウ酸塩入りEPS、アルミサッシは2.33W/m2kの製品を採用しています。計算Q値が1.47w/m2k、現場実測Q値は1.28w/m2kの性能です。実測はもちろん当社の建物も実測していただいた岐阜の服部さんがやりました。彼は今回の見学会にも参加して居ました。

この高性能な住宅には、単に高断熱というだけではない驚きの仕組みが組み込まれていました。
なんと10帖用のエアコン1台で全館冷暖房を実現していました。
換気は全熱交換器付き250m3/h、送風はDCモーターの汎用天井換気扇を10台使います。これらの装置で24時間換気も同時におこないます。

説明は施主のIさん自身がして下さいました。当然、自宅の計画ですから熱収支や機器の選定もご自分でされたとのこと。
途中に坂本先生の助言を得て工務店と試行錯誤で建てたようです。

建物は内部中央に大きな吹抜が有ります。

小屋裏にはエアコンが設置され、その温風が大きなダクトを通り2階の階層間と床下に導かれます。
階層間と床下を巨大なチャンバーに見立て、それぞれの階の床面からゆっくりと温風が吹き出す仕組みです。

床下のチャンバーは当然ながらコンクリートの巨大な熱容量を持っています。これが室温の安定にも大きく寄与しています。
そのため、エアコンを稼働し始めてから室温が安定するまで1週間程度掛かります。


小屋裏部屋でたった一人で一生懸命お仕事中のエアコン君です。(えらい)

いや一人では有りませんでした。熱交換換気装置君も頑張っていました。

床面の吹き出し口です。

床面からの吹き出しは、寒冷地では床下暖房などでおなじみですが、床面全体が暖まるため、床からの放射熱が大変大きくてとても快適です。
もちろん床近くと天井近くの温度差はほとんど有りません。

送風機は一台3w程度の消費電力で10台使用してもたった30w程度です。
風量は全部で1000m3にもなります。モードを「強」運転にするとその倍の風量です。
このシステムを省令準耐火仕様に当てはめるには2階の階間の防火区画に防火ダンパーを設ければOKですね。
吹き出し口からの風量をデリケートにコントロールする事は無理ですが、住宅ではそれでも充分だと思います。
Iさんは今後この住宅の温熱データを収集して、秋の建築学会には発表したいとおっしゃっていました。
期待したいですね。

見学終了後は坂本先生を囲んで近くのビストロで打ち上げを行いました。
私もちょっと混ぜてもらいました。そこでは健康住宅や省エネ住宅の話題で持ちきりでした。
飛び入りの私を快く参加させていただき皆さんに感謝です。



以前御殿場の住宅で服部さんにQ値を実測してもらったときの様子です。
http://d.hatena.ne.jp/aldy/20100208
http://d.hatena.ne.jp/aldy/20100212/1266043831


ヤギモク 遠藤