粘弾性体を用いた合板耐力壁の動的特性 その2

前回に続き今回は、N50釘より一回り太くて長いCN65釘を用いた試験を見てみましょう。
試験体のスペック、試験方法は前回を参照下さい。
http://d.hatena.ne.jp/aldy/20121022/1350885646
この試験体はCN65を@80㎜で留め付ける為高倍率になる壁です。


まずテープ有りの速度0.5Cain、30Cain、50Cainのグラフを見てみましょう。

これを見ると速度が速くなるにつれてグラフが膨らんで見えるのが判ります。
つまり粘弾性体に速度依存性があるため早く加力するほど耐力が大きくなっています。

次にテープ無しの速度0.5Cain、30Cainのグラフを見ます。(50Cainはやりませんでした)

0.5Cainから30Cainに速度を上げるとこれも耐力が上昇しておりグラフが膨らんでいます。
前回のN50では速度依存性があまり見られなかったテープ無しですが、このCN65では顕著に表れることが判ります。

更に判りやすく、各ループ毎のグラフを見てみます。
これは正負交番で5回繰り返した内の、黒:1回目、緑:2回目、青:3回目、赤:4回目、紫:5回目を現します。

まずはテープ有りです。

そして次にテープ無しです。

これを見るとテープ有りも無しも1回から5回まですべてのループで速度を上げた方が耐力が向上しています。
この点は前回のN50とはかなり違う特徴ですね。

しかしこれを見るとテープ無しの方がかなり耐力が大きい事が判ります。
CN65ではテープを入れて釘打ちすると、合板と柱の間の摩擦力が低下して耐力が低下する傾向がありそうです。
これはN50よりすこし顕著な感じですね。
N50では1回目のループだけはテープが有った方が強く、繰り返す内にテープ無しと同等に下がって来たのに対して、CN65では1回目からテープが無い方が耐力が大きい事が判ります。つまり、このテープは太い釘を用いた耐力壁にはあまり向いていないのではないかと思えますね。
今回のCN65も前回のN50も0.5Cainの遅い速度ではテープを入れると荷重が上がらず、同様にゆっくりな速度で行う壁倍率の試験では不利ですね。



等価粘性減衰常数を見ると、N50同様にテープを入れた方がやはり大きくなります。
最大で4%程度の差が出ましたが、テープ無しでも元もと10%前後から15%程度まで有るので、等価耐力にしてもそれほどの大きな差はないと思われます。

結果として、ヤギモクのエピオス工法ではCN65より少し頭の大きな釘を使っていて、特性としてはこの釘に似ているため、採用には至りませんでした。



ヤギモク 遠藤