静岡県ユニバーサルデザイン・工芸研究会のバス見学会

先週、静岡県工業技術研究所のUD・工芸研究会のバス見学会が有りました。
年に一度開催されるこの見学会は、静岡県内外の製造業の企業の生産現場を見学して回るものです。
今年の参加者は事務局の方々を含め22名でした。

静岡駅を朝8時に出発し、9時には最初の訪問先である富士市の「日本建設機械施工協会 施工技術総合研究所」に到着です。

ここは日本の高度成長期に開設され、土木工事の様々な工法や機械の開発を行ってきた施設です。
製造業の生産現場では有りませんが、とても興味深い施設です。


現在は遠隔操作可能な土木機械の開発やオペレーターの教育なども行っています。


疲労試験の施設も巨大です。これは道路の床版の疲労試験を行う装置です。

50トンの荷重を掛けながら繰り返し試験が可能です。


次の疲労試験機は日本でも最大級の装置です。見学したときには高速道路から取り外した長さ17mものプレキャストの橋梁桁の疲労試験をやっていました。
そのため撮影は禁止でした。この写真はカタログからの転載です。

昭和50年に作られた装置ですが、現在同じ物を作れば40億円ほど掛かるとの事でした。静的荷重で600トン、動的荷重で400トンの載荷が可能です。
行っていた試験は荷重制御で変位量の変化を調べていました。変形量はおおよそ40㎜程度で、ひずみゲージがたくさん貼ってありました。2ヶ月間の試験だそうですが、スピードは速いのでデータロガーの記録間隔も短いと思われます。試験も大変ですが、後の解析もデータが多すぎてやっかいですね。
試験費用が気になったので聞いたところ、この試験では2ヶ月で1千数百万円との事でした。装置が1日5万円で、加えて電気代が相当掛かるようです。


これは金属疲労の破断面です。光っている部分が疲労による破断部分です。この様に破断面を見れば疲労破壊はすぐに判るとの説明でした。

このほか、災害用の仮設の橋や大型の恒温室、実大のトンネルや音響測定装置など、興味深い物がたくさんありました。


次に訪れたのは「横浜ゴム三島工場」でした。
ここは撮影禁止でしたので写真はカタログからの転載です。

タイヤの製造は金型による成型とばかり思っていましたが、実は多くのパーツを別々に作り、それらを段階的に組み合わせて最終的なタイヤの形にするのです。興味深かったのは、自動車メーカーから発注されるタイヤと市販品として販売店で売っている物とは違うとの説明でした。自動車メーカーへ納入するタイヤは最終の検査項目が市販品に比べ3〜5種類ほど多いとの事でした。これは使う車が決まっているため、その車に最適なチューニングを行うのだそうです。
三島工場ではレーシングタイヤも製造しているのですが、持ち上げてみると意外と軽いので驚きました。レーシング仕様は表面がツルツルしていて硬いのですが、熱を持つと粘りが出るとの事でした。


最後に訪れたのは御殿場市にある「ムーンクラフト」さんです。
ここはレーシングカーの設計・製作や風洞実験による空力実験・開発、各種プロトタイプやショーモデルの製作です。

開発部長の竹林さんの解説で所内を案内してもらいました。
風洞実験施設はなんとこの会社の手作りです。

自動車メーカーのエアロパーツ類の企画もやっているようです。

レーシングカーのボディーのパーツの造り方を教えて貰いましたが、気の遠くなるような作業工程でした。
ボディー1台分でいくらするのか聞いたところ、簡単なデザインで3000万円、高い物では1億円ほどだそうです。
それにエンジンや機能部品類が乗るので、レースをするのはものすごい費用が掛かるのです。

様々な製造現場を見学するこの企画は、UD・工芸研究会のまさに目玉企画です。
参加者の数がもっと多くなるように啓蒙をしていきたいですね。

ヤギモク 遠藤