3層フローリングのガス温水式床暖房試験

最近、海外生産された3層フローリングの輸入量が増加しています。
3層フローリングは無垢では困難な幅広サイズが可能なため、仕上がりがゴージャスになります。
また、表層に貼るひき板に、高価な銘木樹種を使用しても、比較的リーズナブルで有ることが理由です。


この写真のように、表層は幅150㎜、長さ1820㎜の一枚板(厚さ3㎜)で、3層に積層されています。
左がハードメープル、右がブラックウォルナットです。


更に床暖房対応商品である事が魅力です。


しかし、ヤギモクではこの様な床暖房対応品を採用する際には、流通業者やメーカーの言葉を鵜呑みにせず、まずは自社で試験してその結果を見てから判断します。そのためこれまでも多くの試験を行ってきました。

今回は3層フローリングの4種類の樹種と表層の仕上げの違い(オイル塗装仕上げ、ウレタン塗装仕上げ)を行いました。
熱源は、ガス温水式と電気式面状発熱体の2種類です。

まずはガス温水式の試験が終了したため、その結果を見てみましょう。


試験の様子です。




試験は、最初の1時間をホットダッシュというボイラーの機能を使い80℃で立ち上げ、その後60℃の温水を149時間連続通湯、合計で150時間の試験です。試験項目は幅方向、長さ方向の各すき間、表層板の含水率、板の反り、突き合わせ部の段差などです。

試験体は下記です。

オイル塗装
  ブラックウォルナット
  ホワイトオーク
  ハードメープル
  ブラックチェリー

ウレタン塗装
  ホワイトオーク
  ハードメープル

まずは表層の含水率を見てみます。

最初は9〜11%までバラツキのあった含水率が、8%前後の値に終息している事が判ります。
ブラックチェリーの含水率は初期段階で大きく下がっていますが、その他はおおよそリニアに変化しています。

ここで、オイル塗装品は10〜11%と一様に初期含水率が高いですね。
ウレタン塗装品は初期含水率が9〜9.3%程度で、最終的な8%と比較すると試験前後の含水率変化がオイル塗装品に比べ小さいのです。
つまりオイル塗装品は周囲の雰囲気に合わせ平衡含水率になっているのに対し、ウレタンでは製造時の含水率を維持している事が判ります。
この結果は当然すき間の変化にも影響が現れてきます。

幅方向のすき間のグラフです。

これで見るとオイル塗装品の方が変化率が大きいことが判りますね。
樹種では、ハードメープルの変化が比較的大きい数値になっています。
しかし、この連続試験ではどの試験体も変化量は小さく、実用には支障が無いことが判りました。

更にオイル塗装とウレタン塗装のみを比較してみましょう。

ウレタンの方が初期含水率が低い分、変化量も少ないことがよく解りますね。

この結果からだけで考えると、温度変化による性能はウレタン塗装品の方が優れている事になります。
しかし、オイルのしっとりとした仕上がりはウレタンでは表現出来ません。
両者とも幅方向の変化量は許容値以内で、その他の試験項目にも特段の問題が無かったため、両方とも温水式床暖では採用可能です。

この試験体を更に80℃の温水で試験する過酷な試験を現在実施中です。これはかなり厳しい結果になると考えられますね。



今回の試験で無償で試験を行っていただいた静岡ガスさん、試験体を無償提供していただいた商社さんにはほんとに感謝ですね。


ヤギモク 遠藤