YUCACOシステム研究会 設立式典出席

先週、品川のダイキン工業(株)東京支社会議室でYUCACOシステム研究会が発足しました。
この会は、建築研究所理事長の坂本雄三先生を中心に有志のメンバーで会の設立を目指して準備してきたものです。
私は今年の1月に坂本先生の授業の中で面白いシステムが有るので見学会を開く、との話を聞き、教室の有志でさっそくその見学会に参加して、初めてこのシステムを見ました。その時、まさにこの方式が究極の省エネ住宅の姿だと直感しました。
このシステムは小型の空調室を小屋裏や床下その他の空きスペースに設け、その中に2.8kW程度のエアコンを1台だけ設置し、そのエネルギーを大量の空気の流れで住宅の隅々まで行き渡らせる事により、小規模な住宅の全館空調を行うシステムです。
面白い特徴は、床下や階間を巨大なチャンバーに見立てて床面全体を暖め(または冷やし)その輻射熱で室内環境をコントロールしようとする事です。床下の巨大な熱容量も室温の安定に寄与します。そして使用する機器はすべて汎用品を使い、極めて省コストで省エネルギーで有ることです。
これまで全館空調システムは多くの会社から発売されてきましたが、イニシャルコストの高さと、特殊機器を使用するため起こるメンテナンスコストの高さに問題が有りました。
省エネという観点からだけ見れば、パッシブな工夫を満載し、自然エネルギーを最大限活用する方法はたくさん有ります。しかしそのために建築費の増加や運用の手間が掛かるなど、問題点も多く、誰もが簡単に利用できる物では無いと感じます。YUCACOシステムは断熱・気密性能が一定レベル以上で有れば比較的簡単に実現できる非常に現実的な方式なのです。

式典は50名ほどの出席者で開催されました。

挨拶で坂本先生は「YUCACOシステムはこれまでの長い研究の中で決定版とも言えるシステム」と評価されました。そしてこれは住宅の「新幹線」になるだろうと付け加えました。昔は在来線より高い運賃の新幹線は特別な時に乗る乗り物だったが、今では長距離移動には当たり前に使われている事を考えると、今後の住宅に欠かせない新たな方式になるとの事です。私も同意見ですね。

第二部の研究報告会では、坂本先生、井口さん、ダイキンの柳田さん、システックの落合さんがこのシステムのこれまでの研究成果を報告しました。

ダイキン工業さんはこのYUCACOシステムにデシカント空調を加えると更にその良さが際立つとの発表でした。エアコンメーカーさんから見れば、これまで一軒の住宅に複数台のエアコンが売れましたが、このシステムでは1台で済んでしまうため、普及すると困るのではないかと思われるのですが、さすが未来を予測している企業です。最近発売したデシカント空調機の「デシカ」の研究報告でした。YUCACOシステムにこのデシカを加えると、極めて良質な空気環境になり、梅雨時期や夏は高原の爽やかさ、冬は過乾燥の無い室内になります。


デシカの実物を初めて見ましたが、その大きさにちょっとびっくりでしたね。(笑)

最後は懇親会でしたが、多くの方々との意見交換が出来て非常に有意義な会でした。

以前の見学会の様子です。
http://d.hatena.ne.jp/aldy/20120120

ヤギモク 遠藤