BAUメッセ視察

先日、ドイツのミュンヘンで開催されたBAUメッセに行ってきました。二年に一度開催されるこの建材展は、ヨーロッパ最大規模を誇り、毎回2000社以上の企業が出展し、24万人を越えるビジターが訪れるものです。
毎年ミラノで開催されるミラノ・サローネと同規模ですが、サローネは主に家具インテリア系であるのに対して、BAUは建材系が主流です。

会場はミュンヘン郊外のMesse München Exhibition Centerで、地下鉄U2に乗り市の中心部から約30分程度です。
サローネの会場であるミラノのロー・フィエラも市の中心部から30分程度掛かりますから、同じような立地条件ですね。
しかし、このミュンヘンの会場は、一つ一つの建物規模はミラノと同じ程度ですが、隣棟間隔が狭く大変コンパクトに並んでいるため、会場間の移動距離が短く比較的見やすい印象でした。
会場のmapです。

会場内に入ると外の寒さと打って変わりとても快適な環境です。

展示で特に目についたのは、やはりなんと言っても断熱材の種類の多さと、その厚さでした。

ウレタン、EPS、XPS、セルロースファイバー、ウッドファイバー、グラスウール、ロックウール、羊毛、微細な木片、真空断熱材など有りとあらゆる素材が所狭しと並んでいました。

開口部も断熱と換気が両立するようなディティールの商品が目立ちました。

補助部材系の便利グッズも多く、小さなブースが乱立状態でした。

ヨーロッパでは古い建物を改修して長期間使用することが一般的なため、断熱改修や内装のリノベーション用素材が多く展示されていました。
これなどは、古い建物の内装に土塗り壁を施し、温水パイプを塗り込めて輻射熱壁暖房にするための商品です。

この様な輻射熱暖房は主に天井や床面に施す物ですが、壁面の実物展示は初めて見ましたね。(笑)

ヨーロッパの戸建て住宅では、壁をRCや補強コンクリートブロック造で造り、床と屋根を木造にすることが一般的です。
トレンドの標準壁厚さは50㎝とのことで、断熱回収用アイテムを扱っているブースはどこも大変重量級の展示でした。

その様な中、真空断熱材のブースを3つ見つけました。どれも小さなブースでしたが、そこには熱貫流率「0.007W/mK」の文字が目立ちます。


この数値は発泡系の断熱材より一桁小さな数値です。2センチの厚さが多いのですが、たった2センチで2.85㎡K/Wの熱抵抗になります。凄いですね。
聞いてみると、試験値は0.0035W/mK程度だが、10年後の劣化を考え、0.007W/mKにしているとの事。
値段は1平方メートル当たり100ユーロ程度とのことで、どこのブースもほぼ同じ価格帯の様でした。

真空断熱材は家電先進国の日本ではかなり以前から冷蔵庫などに使用されてきましたのでそれほど珍しい物ではないのですが、芯材に使われている素材が日本とは異なり、microporous fumed silica でした。これは微細孔の焼成シリカの様な意味なのでしょう。

接触の繋がりで熱伝導率を低く抑える機構ですね。


日本では芯材に、主にグラスウールが使用されます。最近では更にそのグラスウールを配向させて繊維が同じ向きを向くような技を使い、更に熱伝導率を下げる工夫がされている様です。日本のこれらの商品の中には、ネットで見るとなんとλ:0.002W/mKとなっているものもあり、まさに驚きですね。

今回、「日本スマートハウス協議会」の視察団のメンバーの皆さんと行きましたが、全員が断熱や音、建材などのエキスパートばかりで、大変有意義な旅行になりました。それぞれの分野の様々な話を聞けたことも、大きな収穫だったと思います。
私は、今回の視察団の団長の坂本雄三先生にくっついて連日会場を回りましたが、そのことも大変勉強になりました。


ヤギモク 遠藤