大スパン木造の見学

昨日千葉県印西市で東大木質研の見学実習が行われました。
この建物は稲山正弘先生が構造計画を担当されたもので、梁間スパン15.3mの弓状の張弦梁で屋根掛けした建物です。稲山先生から直接構造の説明をしていただけるとの事で、直前の招集にもかかわらず遠方からもメンバーが集まりました。


さて、気になる大スパン梁ですが、梁の下弦部はレッドウッドの集成材を、追っ掛け大栓継ぎの技法を応用した手法で繋いでいます。材同士が引っ張り合いながら、部材接合面のめり込み強度と材の張力でバランスしたこの下弦材の上に細い束材を立てて上弦材を支えます。合理的です。
これなら特殊な材料を使用せずに大スパンを支えることが可能です。この部材同士の幅方向の接合はパネリード(長いビス)で留めてあるだけです。力学的に不必要な所には、余分なコストは掛けないと言う明快な意志を感じました。


稲山先生の接合部のスケッチ

梁の端部と柱材との接合は「かくれんぼう」という長い隠しボルトで留め付けてあります。


南面の庇部分は寺などの軒を支える「はね木」の様な天秤方式になっていて、建物内部で屋根から伸びた縦ルーバーの端部で押さえつけて方持ちになっています。この庇は全体として、南面の風圧力を左右の耐力壁に流すための水平梁になっていて、その梁としての機能を果たすために、部材の接合はホールダウン金具で緊結してあります。


JA西印旛農産物直売所として建築中のこの建物は、巨大な木造建築物ですが、金物接合をうまく使い、プレカット工場で加工することを念頭に計画されました。

細部のディテールにもこだわったこの様な木造建築物が、これから各地の木材で多く建設されることを期待したいですね。静岡県でもこの様な建物が建って欲しいものです。