金物接合と背割り柱のコラボ

ヤギモクでは木造の接合部に金物接合を採用しています。使用する木材は、構造強度と含水率が明確な集成材です。しかし昨年夏に金物メーカーによる多くの試験を経て、やっと無垢材の使用が可能になりました。更に木材の乾燥技術が進歩して、高温セット乾燥と呼ばれる乾燥方法で背割りの無い良質な柱が静岡県でも製造できるようになって来たのです。何とかこれで静岡県産の無垢の木材を使用するための道筋が見えてきたのです。
いよいよ地産地消です。

とは言うものの、静岡県優良木材の基準では含水率20%です。これまで含水率13%程度(ほとんど平衡含水率)の材料にこだわってきたため、突然20%の柱などを使用する事はできません。建てたあとで木材の収縮が原因でクレームになってしまいます。そこでいくつもの製材工場と折衝して、やっと当社の希望する含水率の木材を供給できる体勢を造りました。
今度こそ地産地消です。

しかし、地元の桧や杉を使用出来るようになったのは良いのですが、一つ問題が有るのです。現在製造できる高品質の乾燥柱は節の有る大壁用の柱のみです。和室に使用する節のない役物柱は、乾燥による表面割れのリスクが大きいため、製造ができないのです。これは困りました。せっかく無垢の柱を使う住宅です。和室にも無垢の柱を使いたい。

選択肢は3つです。
1.割れの心配のない心去り柱を使う。
2.高温セット乾燥で無理矢理、役物柱を製造する。
3.和室のみ背割り柱を使う。

1と2は金物接合が可能ですが3ではできません。なぜなら背割りがあるとドリフトピンという太いピンを打ち込んでも強度が確保できないのです。しかし、心去り材は高価なうえ木目をそろえる事が難しく、また高温セット乾燥の役物柱では製造できたとしても色と香りがイマイチです。高温セット乾燥は木材表面のリグニンを一度軟化させるため香りが飛んでしまう傾向があります。

その様な中で、ダメ元で金物メーカーに相談した所、現在開発中の金物の中に良さそうなアイテムが有りました。まだリリース前の物ですが、もしかしたら背割り柱にもホゾパイプが安全に使用出来るかもしれません。
いよいよ今度こそ地産地消です。

その様な訳で、金物メーカーであるグランドワークスの大倉さんに無理に御願いして、当社で構造計算に使用するためのデータを得るための試験をやって貰うことにしました。

試験体は中間柱タイプ、隅柱タイプそれぞれ8体づつです。そこで取れたデータは他社にも開示OKという約束です。

そこで新たな問題です。試験のためにはヤング係数のバラツキの少ない試験体をそろえる必要が有ります。困りました。しかし、大井川小径木の柳川さんが杉のE50と桧のE70の材を多くの木材の中から一本づつグレーディングマシンに掛けて必要量を選んでくれたのです。

これで試験が可能になりました。
今度こそ本当に地産地消です。

今週これらの材料を大倉さん宛送ります。

どうなるか楽しみです。