森林・林業研究センターとの共同研究

3月末に浜松の森林・林業研究センターへ、共同研究の件で行きました。4月から予定している共同研究の打合せでした。先週末に共同研究に関する申請書を提出し、いよいよ本格的にスタートです。今回の共同研究は、静岡県産材を有効利用するための基礎データの収集が目的です。

なぜその様な事を私たちヤギモクがやらなければならないのかと言えば、接合金物を供給しているメーカーでは、性能試験を一番弱いと思われる材料で行い、それ以外の材料で使用した場合は「安全側」なので大丈夫、と言った低い数値のデータしか出していないからです。

具体的に言えば、柱、土台はスギのE50程度の木材(基準弾性係数が4.9kN/mm2、5%下限値が3.9kN/mm2)を使用して試験を行います。そうすれば、他のどんな材料を使用しても、まず間違いなくこれ以上の強さになります。つまり最低値を保証するものです。しかし、現実の世界では、この様な最低値以上を保証しても意味がありません。実際に造られる建物の強さがどのくらいなのかが重要なのです。それなら、事前に一番弱い材料から、強い材料まで段階的に試験して、一覧表を作成すれば良いはずです。しかし、その様な事は金物メーカーではやらないのです。

なぜかと言えば、使用木材の強度別に試験を行い、それを開示したとしても、各地域での木材供給業者のレベルがそれに追いついていないのです。つまり、一本づつの強度を測定して販売する事はほとんど有りません。最近やっと「しずおか優良木材認定制度」がその辺をカバーするために動き出しました。しかし、強度を測定するためのグレーディングマシンはごく一部の施設にしか無いため、実際にはほとんどの材料の強度は証明することができません。証明すらできない材料のために、強度試験の一覧表を造っても誰も使えないのです。

この様なお寒い状態ですが、利用できる材料は一部ですが存在します。その材料の有効な利用のために、強度を測定して許容応力度計算(構造計算)に使用するのです。構造計算の基礎データですら自ら試験しないと得られない現状が問題なのですが、その様な事を恨んでも仕方有りません。

今回試験する内容は下記です。
* 金物接合による、土台−柱、柱−梁、梁−梁、の接合強度
* 県産材のヒノキ・スギ合板と上記の柱の耐力壁、水平構面(床面)の強度(釘N50,CN65,床CN75)
* 許容応力度計算の詳細計算法で使用する「釘一本当たりのせん断強度」

これらの試験地は明快な数値が取れれば、一般に公開する予定です。この事により、静岡県産木材の利用促進に多少は寄与できるのではないか?と考えています。


以前、森林林業研究センターで壁の試験を繰り返し行いました。今回もこの様な試験をやります。