木造耐力壁の面内せん断試験

昨日まで2日間、浜松市静岡県森林林業研究センターで、長期優良住宅先導的モデルで採択を受けた耐力壁の面内せん断試験を行いました。

先月から用意していた試験体を2日間で一気に壊します。
今回は2Pの試験体4体、3Pの試験体を5体の計9体です。
これらを水平力を掛けながら壊して、壊れ方の特性と耐力を調べます。


この長期優良住宅先導的モデルとは、国土交通省が実施している補助事業で、全国から寄せられた提案の中から優れた内容の案件を選び、実際の建物を建設する際に1棟当たり200万円の補助金を交付する事業です。
ヤギモクでは平成20年度と22年度の二回にわたり採択を受けました。

今回の22年度の採択では、地域木材活用の為の活動として、静岡県産の木材から製造した針葉樹合板と、県産木材とを使った耐力壁や各種接合部の基礎データを測定し、それらを許容応力度計算で使えるデータにして公開する事も含まれています。
そのため、まずは一番活用度の高い耐力壁試験から行いました。
これはヤギモクと森林林業研究センターとの今年度の共同研究のテーマでも有るため、春から計画していました。


2Pの試験体の作成の様子。プレカットされた試験体を組み立てます。

試験機に設置するとこの様になります。試験機は島津製作所製です。


まずはCN65釘100ピッチの耐力壁です。
柱と土台は県産ヒノキ。梁は県産のスギです。

合板一枚の耐力壁では通常は2.5倍の壁倍率になりますが、釘を太くしたり、打つピッチを細かくすれば、耐力壁の耐力も高くなります。

CN65は一般木造に使用されるN50より一回り太くて長い釘です。
耐力壁試験では、通常、土台と柱はスギを使います。それも乙種2級です。これは最も弱い材料なので、その他の材料を使えばその試験値より高い数値となり、実際の建物は安全側になるからです。

ヒノキはスギより密度も高く釘の保持力が高いため、CN65と針葉樹合板との組み合わせでは、合板が負けます。
この様な場合、終局は釘の頭が合板から抜けるパンチングアウトや合板の端切れになります。

データはこんな感じで表示されます。グラフがよく見ると多少上に浮いています。最初のキャリブレーションでぶれたようです。これはあとで補正します。


試験を終えた試験体はその場で解体します。釘の本数が多いので大変です。


3Pの試験体はヤギモクでも初めてです。
森林林業研究センターでも初めてで、アクチュエーターの推力を上げるため、油圧コンプレッサーの圧力を通常より高くして臨みます。


3Pでは、東大の木質材料学研究室から借りてきた引き抜き力を測定するロードセルを足元にセットします。
今回は足元の引き抜き力の測定も重要なファクターです。

そのため試験体の足元に付けるホールダウン金物も異様な状況です。

私も大量に汗をかいたため多少は痩せたかもしれませんね。とにかく暑い二日間でした。


壊れるとこんな感じです。


3Pの一体合板(3枚の合板が一体となった試験体)は最後の終局で繋げてあった部位が破断し、次回以降の再チャレンジになりました。
しかし、ループの部分の特性はきれいに採れました。
試験を実施していただいた池田潔彦さんと、終局の状態をチェックします。

3Pの試験体は私の修論のネタでも有り、様々な工夫が盛り込まれています。
採れたデータもとてもおもしろい内容です。残念ですが現段階では未公開です。
来年の建築学会発表に向けて頑張りたいと思います。

実は二日間では全部の試験ができなかった為、8月9日に再度2体の試験が有ります。
今回の試験では、企画設計部の有志のメンバー(実施計画、商品企画、購買、設計)と工事課の協力で実行できました。みんな二日間猛暑の中お疲れ様でした。