耐力壁ジャパンカップへの道 その4 完結編

木造住宅の強さは耐力壁の強さと量とそのバランスによって決まります。そのため耐力壁その物の強さはとても重要なのです。私たちがいつも何気なく使っている壁も、地味な強度試験の結果を元に決められています。


耐力壁の強さを極限まで追求するためには非常に高度な知識と技術が必要になります。この耐力壁ジャパンカップとはその様な先端技術を競い合う場なのです。


会場となった埼玉の「ものつくり大学」の試験棟です。

私たちが宿泊したドミトリーです。キレイな建物でした。管理人さんにはお世話になりました。


いよいよ準決勝の開始です。第一試合は東大木質材料学研究室の稲山先生率いるチーム匠と東工大坂田研究室チームです。

結果はチーム匠の圧勝でした。最大耐力は24.78KNです。


対戦中には、10KNを越える毎に拍手がわき起こります。異様な光景です。会場内は知らない人が見たら引いてしまうような不思議な雰囲気が充満しています。対戦が終わる毎に壊れた部位を皆で写真撮影です。
当然私も壁オタクの一人なので壊れた壁に群がっての写真撮影です。


いよいよ準決勝第2試合、我が板壁1号と、東大山口・金子チームの対戦です。

3回目のプレゼンの後、ジャッキに圧力が掛かり始めます。
途中、板壁1号の梁が曲がりまじめました。
足元のアラミドベルトより上部の梁の耐力の負担率が多すぎるようです。

いやな音がして梁が折れはじめ、足元が浮き始めました。

途中34.57KNまで耐力が上昇した後、残念ながら梁が完全に折れてしまいました。
しかしその後も加力は続きます。
ついにジャッキを引ききり、変形量の差で山口チームの勝利でした。敗れた私たちは耐力壁の前で記念撮影です。

足元のパラアラミドはまだ健在です。梁側をもう少しゆるくしておけば、もっと耐えた?と思われます。

反対側の柱脚はめり込んでいます。

折れた梁です。


トーナメントで敗退すると、そのまま後方の解体場所へ移動して、解体時間の測定競技が始まります。
今回は3人で臨みます。



最後は会場を掃き清めて、最初の場所に戻り合図をして終了となります。
時間は約11分でした。ご苦労様でした。

そして、いよいよ決勝です。
稲山先生のチーム匠と東大山口・金子チームの戦いです。
稲山先生はこの大会の司会をしているので、当然自分のチームも紹介します。

結果は、山口・金子チームの部材が一部破壊しつつも、最後まで引ききり、変形量の差でチーム匠が優勝しました。
稲山先生、おめでとうございます。最大耐力は49.45KNでした。

当然終了後の壁を見ようと、ギャラリーが詰め寄ります。

最後はEXHIBITIONの後で、優勝したチーム匠の「あやめⅡ」を片押しして破壊します。
耐震強度の評価をするためには優勝した壁といえども壊れるまで加力します。ちょっとむごいですね。

その結果、なんと59.4KNもの耐力が測定されました。おそるべしです。

今回の大会は昨年よりルールが厳しくなり、総重量200キロ以下、使用金物は3キロ以下で、ここまでの数値を出すのは普通ではありません。
今回集まったメンバーの次の目標は当然のごとく「打倒稲山」です。

来年もまた、熱い戦いが繰り広げられる事でしょう。

トーナメントの結果は、
1位 チーム匠 
2位 東大木造建築コース+金子建築
3位 ヤギモク・静大チーム となりました。

チーム匠はこのほかにも総合優勝、耐震部門賞を取り、圧倒的でした。

1位から3位までは東大の木質材料学研究室の師弟対決でしたので、結果的に上位を東大が独占する形になりました。

さあ、来年はどんな壁で攻めるか、、、 しばらく眠れませんね。
私もオタク度が相当高まったようです。

稲山先生は満面の笑みでした。


ヤギモク 遠藤