第132回木質構造研究会

今週月曜日に東大農学部弥生講堂アネックスのギャラリーで研究会が開催されました。
今回は「住宅リフォームの現状と今後」と題して、3人の講演者からの話題提供という形で講演を頂き、その後短い意見交換を行うというものでした。

話題提供者はこの3人です。

越海興一氏  (財)住宅リフォーム・紛争処理支援センター

永元博氏  住宅価値創造研究所

山本邦史郎氏  東京大学

まず最初の越海氏は「住宅リフォーム市場のいま〜国策によるリフォームの推進と課題」と題して、トラブル処理という観点から見た住宅リフォームの現状解説から始まり、実際に起きているトラブルやその問題点などを解説頂きました。
問題点としては、品質管理、契約、見積もり、請負業者への不信感などでした。品質管理では、古い住宅の改修工事で、何度直しても直らないなどの苦情や請負者の現場管理能力の欠如による苦情、契約では、そもそも契約書が存在せず口約束で工事に入り、現場での変更があり最後に金銭トラブルとなる事例などが有りました。見積もりでは第3者が客観的に見てよく解らない内容が多く、マトを得ていないなど、どれも切実な問題でした。
次に「住宅リフォームの人材育成」の話が出ました。これは新築住宅建設に比べリフォームの担当者が担う範囲が大きく、そのすべてに専門知識が必要であるため、高度な能力が担当者に求められるため、資格制度の充実を揚げていました。最後に住宅金融支援機構がおこなったリフォームコンクールの入賞作品の紹介が有りました。


2人目の永元氏は「住宅リフォーム実践編」と題して、実際にリフォームを行う会社として、現状のリフォームの状況を報告しました。氏はリフォームに至る動機として設備の更新などがあるが、キーワードとしてリフォームを見ると、「耐震リフォーム」「高齢者対応リフォーム」「省エネリフォーム」などが有り、それぞれに施工事例を挙げ写真を見ながら詳細な説明を頂きました。そして小型のリフォームが多い中、数の上では5%程度しかない1000万円を越える様な大型リフォームが、売り上げで見ると半分程度の割合を占めることなどを紹介頂きました。


最後の話題提供者は私の木造建築コース同期の山本氏でした。彼の講演は「既存木造住宅における長期優良住宅制度の適用」でした。新築に続き既存住宅にも長期優良住宅の制度が始まりましたが、消費者拠りの観点から見たこの制度の問題点を提起するという内容でした。長期優良住宅の概念はそれ以前に国交省が定めた住宅性能表示制度から来ています。そのため、各種の性能をどう担保するかの具体的な仕様規定が有り、それらと現状の住宅改修とのギャップを指摘し、長期優良におけるリフォームは、今後どの様な検討が必要かを明らかにする内容でした。具体的には「劣化対策」「耐震性」「省エネルギー性」などの項目毎に、長期優良住宅に要求されるレベルと現状の住宅との差異を揚げ、そもそも目標とする水準をどう考えるのかの考えを明らかにしました。

3人の話題提供の後、それぞれに質疑応答が有りましたが、活発な意見が続きました。
この様な有識者の集まる場所で、これらの問題提起がされたことは大変意義が有ったと思います。
最後の山本さんの講演では、実際に政策を検討する立場の方々から、同意見であり大変興味深いとの反応が有りました。

私たちヤギモクでも多くのリフォームを行っていますが、今後の需要の伸びと、対応する技術者の数とのギャップは常に感じている事柄です。より良いリフォームを安定して行うためにも、様々な立場の人たちが議論し、実践してレールを敷いていく事はとても重要な事だと感じました。


ヤギモク 遠藤