建築研究所見学 その1 LCCM住宅

昨日、日本スマートハウス協議会のメンバーの皆さんと一緒に、つくば市にある建築研究所を見学しました。
4月にこの研究所の理事長に就任された坂本雄三先生が直々に所内を案内していただけるとの事でとても楽しみにしていました。
研究所に着くと理事長室で先生から研究所の概略と、今回見学する施設の説明を受けました。
そしてさっそく見学開始です。皆で先生の後に続きます。

最初に向かったのは昨年2月に竣工した今話題のLCCM住宅です。名前は「衣替えする住宅」
LCCMとは「ライフ・サイクル・カーボン・マイナス」の略です。その概念図が下記です。

どんな建物も建てるときに様々なエネルギーを使います。しかしソーラー発電でエネルギーを生み出しながら、使用するエネルギーを最小にとどめる事で、最終的にはCo2の排出量をマイナスにする事が可能な住宅の事です。つまり、エネルギーの使用量を極力少なくしながら、一方では快適な生活を楽しむための住宅です。


屋根には8kWhの太陽光発電と太陽熱温水パネルが乗っています。
南面はもちろん全部開口部になっていて、太陽エネルギーをしっかり取り入れる事が出来ます。

住宅の南側は縁側になっていて、エネルギーのバッファーゾーンとなっています。

その縁側には外側と内側にそれぞれガラス戸が有り、夏、冬、中間期、就寝時、不在時などの各モードが設定されています。
これは昔から有る「パッシブソーラーハウス」の基本形ですね。しかし使用されているのはどれも現代の技術です。
外部サッシは樹脂性で真空ガラスが使われています。
Q値は1.98W/㎡k、C値は1.2cm2/m2です。これは順寒冷地のおける断熱・気密のレベルです。
木造の建物ですが、コンクリート量を減らすためにべた基礎ではなく布基礎を採用しています。

南面を目一杯使うため、玄関は北側になります。北面の上部には換気塔が見えます。


中にはいるとまず気になったのが縁側にあるこの南面のルーバーです。

冬の昼間はこの様に重なって小さくなります。

縁側の床面はダイレクトゲインをしっかり蓄熱するために、熱容量の大きなタイル貼りです。もちろん床下は地面で、夏の夜には床面の格子から涼しい空気が入り込み、重力換気で室内の熱を屋根の排気塔から出す仕組みです。

気になる耐力壁は、南面に直接作れないため、縁側の内側に有ります。

この様な一対の壁が1、2階に1セットづつ有ります。おそらく9㎝角の片筋違(壁倍率3倍)が入っていると思われます。

縁側は1,2階が繋がっており、自由な通風が得られます。

踊り場もスノコ状になっておりこだわりが随所に見えますね。

2階の室内はSimpleな構造で、建具で仕切る大空間になっています。

室内の空気はすべて換気塔に導かれる構造になっており、その分音も伝わりやすくなっています。

プライバシーの保護と全館的なパッシブ換気とはやはり相容れない部分なのですね。
ダクトから下をのぞくと、その底には洗面室が見えます。

研究用の住宅なので人は住まないのですが、この住宅の住み心地がどうなのか、とても気になりますね。
様々な工夫を大胆に使い今後のスマートハウスのプロトタイプになる様な近未来的な住宅でした。

ヤギモク 遠藤