ウォールスタットとシーデクセマのコラボ

先日の木材新聞に興味深い記事が載っていました。

記事によると、NPO法人シーデクセマ評議会は、CEDXM(シーデクセマ)とウォールスタットの連携に向けた開発を行うと発表しました。

CEDXMとは、木造軸組工法住宅に関する建築意匠CADとプレカット生産CADのデータ連携を目的として構築された標準的なファイルフォーマットで、各メーカーの意匠系CADで作成したそれぞれのデータを、このCEDXMと呼ばれる一種の中間ファイルに変換し、他のCADでも読み込める形式にするための共通規格なのです。
この事により、意匠系CADで作成したデータをプレカット生産用CADに読み込み、データの一貫性を確保することで、全体の生産性を高めることが出来るのです。まあ、プレカット業界にとっては今後、重宝しそうな技術ですが、一般的な工務店などでは殆ど用が無い物です。
しかし、この中間ファイルに変換した住宅データを構造計算ソフトや温熱計算ソフトなどに読み込むことで入力の手間を減らし、様々な利用が可能になる点では楽しみな分野ですね。

そして、もう一つのソフト「ウォールスタット」は、木造住宅の地震における倒壊解析ソフトです。これは私が通う東大農学部の木質材料学研究室の先輩で、現在国総研住宅研究部の中川貴文さんが建築研究所にいたときに作ったものです。このソフトを使うと、振動の数値解析により、木造住宅がどの様に壊れるのかをアニメーションで見ることが出来るのです。それも非常に精度の高いシュミレーションが可能で、最近よく行われる振動台実験と同様の事がパソコン上で出来ると言う優れものなのです。

ところが、ウォールスタットは入力その物がCADライクでは無く、数値で入力しなければなりません。その意味では構造研究者が使うための研究用ソフトなのです。

たとえば、熱回路網計算が可能なSMASH(スマッシュ)も数値で入力するため、一般的な工務店レベルで使用する事が難しく、「AE-CAD」などの入力補助的なCADソフトとの連携で一般住宅の温熱計算に利用可能になりました。
実はヤギモクでもこのAE-CADとSMASHの連携で、長期優良住宅の温熱計算をやっています。SMASH単独で使うより格段に操作性が良いのです。


まあそのような事から、ウォールスタットの持つ驚異的なシュミレーション能力を、意匠系CADやプレカット用CADの入力データから読み込んで使用可能になれば、誰でも簡単に、とは言いませんが、かなり楽に倒壊のシュミレーションが出来るようになるはずです。

その意味で、この木材新聞の記事は感動的なのです。

記事を読むと、東大生産技術研究所の腰原先生が今後の展開に強い意欲を示していました。
実際に使用可能になるのはいつなのか、今度中川さんに会ったときにでも聞いてみたいと思いました。


ヤギモク 遠藤