柱脚接合部の試験その2

前回行ったHSP-100を使った試験では、土台、柱にそれぞれドリフトピン1本づつでしたが、次はそれぞれ2本づつのHSP-190です。
この接合金物は14キロニュートン程度の短期許容耐力となっています。

これです

桧の土台に2本のドリフトピンで接合されるため、かなりの耐力が予想されます。

試験体をセットした状態です。

おそらく土台は割裂ではなく折れ曲がって破壊に至ると思われますね。

やってみると、やはり予想通り、土台が折れました。

単調加力で44キロニュートンでした。恐ろしい値です。
柱心から左右に400㎜づつ離れた場所にアンカーボルトが留められているこの試験体では、当然土台が折れてしまいます。グラフから推測すると降伏点も35キロニュートン程度は出ています。つまり、この金物を桧土台に使用すると定格値の2.5倍程度の強さが出ます。もちろんバラツキを考慮して5%下限値で基準耐力を設定しますからもっと小さな値になるのですが、それでも大きな値です。


次は梁と柱の接合部です。
梁は米松と杉のハイブリットビーム、柱は桧を使用します。

接合金物は20キロニュートンHSP-20Knを使用します。

梁にはドリフトピン2本、柱には3本の構成です。


梁背は240㎜(8寸)です。

単調加力では59キロニュートン、繰り返しでは35から52キロニュートン程度でした。
グラフを見るとすべての試験体が共通の形となります。
つまり、途中で梁の割裂による加重の落ちがあり、その後もう一度上がり、PMAXとなります。

破壊性状はこの様な状況です。

梁に打ち込んだ2本のドリフトピンの部分で割裂して壊れます。
もちろん実際の建物ではこの様な破壊を起こさないように設計するのですが、むりやり破壊するまで加力するとこの様な終局となります。

この次が実はおもしろい試験なのです。
上記の梁と柱の試験体にL型の柱脚金具を更に加えて取り付けます。
この様な使い方は認められていません。なぜなら、それぞれの金物には耐力特性が有り、構造計算ではそれらの値を合算して使用してはいけないのです。まあ、当たり前ですが。
しかし、実際に同時使用して試験値を取得すれば、その複合的な使い方で構造計算しても問題はありません。

この金物を加えます。

おもしろいことに、このL型金物を追加すると接合部の合成Kが高くなりました。つまりグラフの勾配がすこし急になったのです。そして単調加力で52キロニュートン、繰り返しで42から67キロニュートンでした。L金物無しと比較すると、繰り返しの試験体である程度の耐力向上が現れました。

破壊はこうなります。

梁の上部からの長いビスで、梁に2本打ち込まれたドリフトピンの上側のピン部分では梁の割裂が見られません。
つまりハイブリッドビームの米松と杉の両方を縫い合わせる事で、梁の曲げ剛性が高くなったと思われます。

これらは最終的なデータ解析が待たれます。


ヤギモク 遠藤