釘側面抵抗試験と釘頭貫通試験
9月17日に浜松の森林林業研究センターで実施した耐力壁の面内せん断試験での結果を実際に構造計算で使用するためには、計算で使用する「短期許容せん断耐力」に換算する必要が有ります。
実大の耐力壁の面内剪断試験で得られたデータを分析して、バラツキを考慮した「短期基準せん断耐力」を求め、それに低減係数アルファを掛けて「短期許容せん断耐力」を求めます。
Pa = P0 × α
このアルファを求めるためには、建築学会から判断基準が示されており、各試験センターなどもこれを元にそれぞれの独自の判断で審査して、大臣認定などの申請などに使います。
検討する内容は
耐力壁の用途に伴う影響を評価する係数
耐力壁の耐久性の影響を評価する係数
耐力壁の施工性の影響を評価する係数
その他の工学的判断により必要と定める係数
となります。
この中で用途に伴う影響を評価する係数を求めるために、使用される合板やOSBなどの面材の性質を試験で調べることになります。
どの様な性質かと言えば、壁下地として使用されている間に外壁の雨漏りで面材が濡れて乾いての繰り返しを受けた場合、その面材がどの程度耐力低下を起こすかを見ます。
今回の面材は静岡県産のひのき合板ですから、これまでの試験データがありません。そのためこの試験データ取得の為、要素試験を行ないました。
試験はいつもお世話になっている静岡県工業技術研究所です。ほんとに助かりますね。
浜松の実大試験と平行して、9月13日から17日まで5日間でおこないました。
それが今回の「釘側面抵抗試験」と「釘頭貫通試験」です。
これは学会の資料でやり方が決められています。
まず合板と釘を使いそれぞれの試験の為の試験体を造ります。今回の試験では各20個ずつ使用しました。
試験の手順は、まず半分の試験体を20℃の水に4時間漬け、60℃の乾燥庫で20時間乾燥させ、このサイクルを2回行い、その後2日間室内に放置して、その乾湿繰り返しの処理をした試験体と、処理をしない試験体を引っ張り試験で耐力測定をして、その差を見ます。
これを二度繰り返し、その後室内に2日間放置します。
それらの試験体を引っ張ります。使用する装置はオートグラフです。
この試験から得られたデータは紙のグラフとデジタルデータで出力されます。
紙のグラフデータ
気になる結果ですが、県産ひのき合板は、乾湿繰り返しを行なっても、まったくと言ってよいほど変化は出ませんでした。一般的にOSBなどの場合は20%程度耐力が低下します。合板の場合では、他の研究資料を見てもこのような結果になっていますので、まあ順当な結果と言えます。
これを元に低減率アルファを決めますが、その他の不測の事態を考慮して、アルファ=0.95を採用することになりました。この数値は、住木センターさんの「木造軸組工法住宅の許容応力度設計」の中の数値を引用しました。
突然の急ぎの試験でしたが、工業技術研究所の赤堀さんが快く引き受けてくれ、本当に助かりました。感謝です。
これにより、長期優良住宅の先導的モデルの構造計算に今回の数値(5.8倍)が使用できるようになりました。
ヤギモク 遠藤